エレベーター

自然と呼吸が浅くなり、背中に汗が流れて行く。


実況することもわすれて立ち尽くしていると『おい、大丈夫か?』と、充弘の声が聞こえてきて我に返った。


「だ、大丈夫だよ。1階のエレベーターも、特に異常はないみたい」


そう伝えた瞬間だった。


グィーン……。


微かにあの音が聞こえて来たのだ。


その瞬間、体からスッと血の気がひいていくのを感じた。


嘘だ。


なにかの勘違いだ。


だって今日は不活動で近くの教室が使用されている。


だからきっと、他の機械音が聞こえて来たんだ。


自分自身にそう言い聞かせながら、部活の教室へと振り向いていた。


瞬間、呼吸が止まった。


徐々に目を口が開いて行き、言葉が出てこなかった。


『美知佳、どうかしたのか?』


充弘が心配そうに声をかけて来る。


「なんで……」


あたしはそう呟いて、スマホカメラを部室教室へと向けた。