エレベーター

☆☆☆

その後、2階でも同じような確認作業をしてみたが、結果は全く同じだった。


扉は開かないし、ボタンも無反応。


残っているのは1階のエレベーターだけだった。


『結局なにも起こらないのかなぁ』


残念そうに言ったのは幸生だった。


怪奇現象の大半は少人数の時や1人きりの時に起こる。


とすれば、今日なにかが起こらなければ、もうなにも起こらないということだ。


「そんなに残念そうにしないでよ。こっちは結構怖いんだから」


あたしは幸生へ向けてそう言い、1階のエレベーターの前で立ちどまった。


途端に、雷雨が鳴った時の光景を思い出して足がすくんだ。


あの日は今日よりもずっと天気が悪くてジメジメしていて、古い校舎へ入った瞬間嫌な空気がまとわりついてきた。


それは湿度のせいだと思っていたけれど、今ここにきて、あの時と同じような不快感が体にまとわりついていることに気が付いた。