エレベーター

「とにかく、逃げたかもしれない方向へ歩いてみるか」


「そうだね」


頷き、2人で歩き出した時だった。


不意に電信柱の陰から人が飛び出してきて咄嗟に身構えていた。


前原かと思ったが、違った。


そこに隠れていたのは一穂だったのだ。


「一穂!」


あたしは目を見開いて驚いた。


一穂はジッとあたし達をねめつけている。


「一穂、どうして充弘にあんなことをしたの!?」


睨まれて、ひるんでしまいそうになりながらも、必死で言葉を絞り出した。


「どうして? それはこっちのセリフでしょ!」


一穂もあたし同様眠れていないようで、相変わらず目の下にはクッキリとしたクマができている。


しかも、なぜだか右手に白い花を握りしめていた。


花は萎れてしまい、花びらももう2枚しか残っていない。


「一穂、それってどういう意味? あたし達が一穂になにかした?」


本当に、わけがわからなかった。


どうして一穂が充弘を攻撃する必要があったのか……。