それに返事をすることもできなかった。


息ができなくて喉をかきむしる。


早く、誰かに伝えないと……!


必死の思いでエレベーターのSOSボタンに手を伸ばす。


これで外部と連絡が取れるはずだ。


大丈夫。大丈夫。


自分を落ち着けるために何度も心の中でそう唱える。


しかし……。


ボタンに手を伸ばすあたしの手を、前原君が掴んだのだ。


前原君はあたしをジッと見下ろしている。


まるで死んで行く蟻をマジマジと観察しているかのように、目を輝かせて。


「まえ……ばらくっ……」


引きつりながら必死に名前を呼ぶ。