「あたし、もっとしっかりしなくちゃね。美知佳たちはしっかり調べものを進めてるし、幸生も頑張ってるのに」


一穂の呟くような声に涙が込み上げて来る。


今一番辛いのはあたしじゃなくて一穂かもしれないと思えた。


好きな人がいつどうなるかわからない。


その不安と恐怖は計り知れない。


赤信号で立ちどまり、ぼんやりと星空を見上げた。


ここ数日雨が降っていないので、今日も星がきれいに見える。


このまま梅雨明けするんだろうか。


咲子さんの苦悩も、こんな星空みたいに綺麗に晴れてくれればいいけれど……。


そう思った時だった。


不意に誰かがあたしの背中を押していた。


両手で、確実に狙って、力を込めて……。


ドンッと押された次の瞬間、あたしの体は赤信号の歩道の上にあった。


え?


と、周囲を見回す暇だってなかった。


「美知佳!?」


一穂の驚いた悲鳴が聞こえて来る。