エレベーター

咲子さんの死は事故ではなくて、事件の可能性がある。


それを伝えてもいいものかどうか判断が付かなかった。


「美知佳。もう全部聞いてもらおうよ」


そう言ったのは一穂だった。


一穂は青ざめた表情で、俯き加減に立っている。


「一穂……」


「このままじゃ幸生はいつ退院できるかわからないんだよ? もし、容態が悪化したら……」


そこまで言って、言葉を切った。


一穂からしても、タイムリミットを感じているのかもしれない。


「そうだね……。少し長くなりますけど、あたしたちが今経験していることを聞いてくれますか?」


あたしは静かな声でそう言ったのだった。