「いいわよ。どんなことが聞きたいの?」


「あの、何度も思い出させてしまって申し訳ないのですが、咲子さんが亡くなった時のことです。あのエレベーター内には緊急ボタンが設置されていると思うんですが、咲子さんが倒れた時、それを使ったんでしょうか?」


あたしは早口でそう質問をした。


咲子さんのお母さんに辛い出来事を思い出させていると思うと、途中で言葉が途切れてしまいそうだったからだ。


「あのSOSボタンのことね? いいえ、咲子はボタンを押していなかったみたいなの」


咲子さんのお母さんはそう言って頬に手を当てた。


やっぱり、そうなんだ……!


「咲子さんはどうしてボタンを押さなかったんでしょう?」


そう聞いたのは充弘だった。


「きっと、そんな暇もなかったんだと思う。発作が起きて急に意識を失ったのかもしれないし。でも、どうしてそんなことを聞くの?」


そう質問されてあたしと光弘は顔を見合わせた。