そこでもう1度、今度はSOSボタンを押したかどうかの確認をするつもりだった。


早足で咲子さんの自宅へ向かった時、ちょうど玄関から出て来るスーツ姿の男性を見かけた。


男性は玄関まで出てきて咲子さんのお母さんと二言ほど会話をし、お辞儀をして歩いて行く。


その男性には右手がないことに気が付き、あたしたちは視線を見合わせた。


「あら、あなたたちは……」


家に入ろうとしていた咲子さんの母親が、あたしたちに気が付いてその場で動きを止めた。


「こんにちは」


あたしは軽く会釈をして咲子さんの母親に近づいた。


「今日もなにかご用?」


「はい。また少しお話を聞きたくて……」


そう言いながらも、あたしの視線はさきいの男性を追いかけていた。


あの人は片腕がなかった。


咲子さんと同じ障害者だということが気にかかった。