ビデオ通話の画面一杯に先生の顔が映っていた。


「先生助けて! 先生!!」


あたしはエレベーターの中から必死に先生に呼びかける。


しかし、先生は怪訝そうな表情を浮かべるだけでなんの反応も示してくれなかった。


「先生! あたしエレベーターの中に閉じ込められてるんです!!」


声が枯れそうになるまで叫んでも、その声が先生に届く事はなかった。


画面上の先生は充弘と一穂へ怒った表情を向けて、帰るように指示している。


「どうしてあたしの声が届かないの……」


先生が助けてくれるかもしれないという、一縷の望みが消えて行く。


そうこうしている間にも蛍光灯は点滅し、壁に出現する影は徐々にその姿をリアルにしていく。


指先までしっかりと形が形成され、ソレはあたしへ向かって伸びて来ているのだ。