「なにも映ってないじゃないか」


その言葉に俺は「え?」と、眉を寄せてスマホ画面を確認した。


画面上では怯えた美知佳が悲鳴を上げている。


一穂にも、同じ映像が見えているようだ。


「なに言ってるんですか! ちゃんと見てください!」


もう1度先生にスマホ画面を見せる。


しかし、先生の反応は同じだった。


生徒が恐怖して悲鳴をあげているのだから、先生なら無視するはずがない。


それなのに、この反応はどういうことだ?


俺と一穂は一瞬目を見合わせた。


「先生、もしかして本当に見えてないんですか?」


一穂の言葉に先生は「さっきから何を言ってるんだ? 用事がないなら、もう帰りなさい」と呆れた声になった。


本当に、見えていないんだ……。


エレベーターの中にいる何者かが、俺たちの邪魔をしているに違いなかった。


「とにかく、3階へ向かおう」


俺は先生の横を通り過ぎて、一穂と共に階段を駆け上がったのだった。