「うん……」


あたしはゴクリと唾を飲み込んで答えた。


エレベーターの前にはられたロープが物々しくて、余計に恐怖心を駆り立てられる。


『すぐに学校へ行く』


「わかった。でも……」


そこまで言ってあたしは口をつぐんだ。


すごく近くから、ブチブチブチッと嫌な物音がして、ゆっくりと顔を向ける。


きっと、充弘は間に合わないだろう。


『どうした美知佳?』


充弘の質問に答えることもなく、目はロープに釘づけになっていた。


誰も触れていないロープが、ひとりでに音を立てて引きちぎれ始めたのだ。


ブチブチブチブチブチブチッ!!


まるで左右から強い力で引っ張られているように。


あるいは刃物で少しずつ傷をつけられているかのように。


ロープはほつれて細くなっていく。


あたしは何度も唾を飲み込んでその光景を見つめていた。