あの後、悲鳴を上げて逃げ出したあたしは雨の中を走って家まで帰ってしまったのだ。


ずぶ濡れになったあたしを見てお母さんは呆れ顔をしていた。


『どうして連絡してこなかったの?』


と、質問してくるお母さんに、あたしは濁した返事しかできなかったのだった。


今日は昨日のような突然の雨に降られてもいいように傘を持って来た。


折り畳傘を持っていないのだから、仕方ない。


一連の説明をすると、一穂は納得したように頷いた。


「あのさ一穂、学校に古いエレベーターがあるよね?」


「うん。それがどうかした?」


「あれって、まだ使えるのかな?」


あたしの質問に一穂は腕組みをして首を傾げた。


「使ってるところなんて1度も見たことないよ? 見るからにボロボロで、壊れてるんじゃない?」


「……そうだよね?」