帯刀(たてわき)羽未(うみ)に話しかけることは諦め、遠くの席へと向かった。

 遠いが、羽未がよく見える席だった。

 彼女の動向を見張るためだ。

 ……なんだか俺の視線に怯えているようにも見えるが。

 まあ、大丈夫だろう、と帯刀は思う。

 だって、俺から逃げようと焦りながらも、ちゃんと好みの小鉢を選んで、トレーに載せてたもんな。

 羽未はそのあとも女子連中とロビーでお茶をしたりしていたが。

 そのとき居た彼女の同期がみな違う棟だったので、羽未は途中の階から、ひとり渡り廊下を歩いて、自分の部署へと向かっていた。

 幸い、辺りに人の気配はない。

 そして、休み時間が終わるまで、もう少しある。

 帯刀は、ちょっと鼻歌まじりに歩いているそのハムスターの襟首をつまみ、すぐ側にある倉庫に捕獲してみた。