自分の部屋に上がったあと、電気もつけずにベッドにダイブする。

俺はたぶん、仁菜の世界に男が入ってくるのが嫌なんだ。


そんなこと無理に決まっているのに、自分の知らないところで、仁菜が男と仲良くなっていく姿を見たくない。

きっと、ただの片想いだったら、こんな風に相手を縛るような考えは生まれなかったと思う。

家族だから、兄貴だから、仁菜と近い距離にいても、恋愛からはどこよりも遠いところにいる。

それを嫌というほどわかっているからこそ、仁菜のことを奪われたくない。

その日が、永遠に来なきゃいいのにと、願ってしまう。


「柊、ソファにスマホあったよ」

ドアノックと同時に、志乃が部屋に入ってきた。


世話焼きの志乃が二階に上がってくることはわかっていたけど……ちょっと早すぎ。

空気を読んでもう少しひとりにさせてほしかった。


「……ねえ、柊。私、今日、邪魔だったかな?」

ギシッとスプリングが軋んだかと思えば、志乃がベッドに座っていた。


「いや、むしろいいタイミングで来てくれたよ」

俺は横になっていた身体を起こす。

インターホン越しで志乃の顔を見た時、俺はなぜかホッとした。

あのまま仁菜とふたりきりでいたら、俺が仁菜のことを傷つけることになっていたかもしれない。

心にブレーキなんてないけれど、今日は志乃がその役割になってくれたと思っている。