ごめん。ぜんぶ、恋だった。



動揺してることは目の動きですぐにわかる。

同じクラスで、席が隣で、おまけに委員会まで一緒で。まるで神様が仁菜に恋をさせるために出逢わせたみたいだ。


「……俺たち、別の出逢い方をしてたらどうなってたんだろうな」

心の中で呟くはずだったのに、気づけば声として出ていた。


同じ学校の先輩後輩として、校舎でたまに見かけるくらいの存在でも、俺は仁菜のことを瞳で追っていただろうか。

それで仁菜は俺のことを、どういう瞳で見ただろうか。

考えても答えが出るはずのない想像を、ずっとしている。


「……お兄ちゃんは、妹なんていらなかった?」

……ドクン。

その質問に、心臓が大きく跳ねた。


「それってどういう意味?」

「私は小さい頃からお兄ちゃんに甘えてばっかりでしょ?私は妹として頼るだけだったけど、急に〝お兄ちゃん〟をやらなきゃいけなくて本当は嫌だったんじゃないかなって」

仁菜が不安そうに、膝を抱える。


「うん、嫌だったよ」

「だよね……」


誰かの面倒をみるとか、誰かを守るとか、一人っ子の俺にはそんな能力は備わっていなかった。

それなのに、他人だった女の子が妹になって、兄になって、俺たちは兄妹という形になった。