ごめん。ぜんぶ、恋だった。




「ちょっと、お兄ちゃん、待ってよ!」

身支度を終えて玄関で靴を履いていると、慌てたように仁菜が追ってきた。

仁菜は誰よりも早起きなのに、支度だけは誰よりも遅い。


「お父さん食べるものがいいって言ってたけど、誕生日になにかふたりで作ろうよ」

親父は俺たちよりも先に家を出て会社に向かった。母さんは回覧板を届けにいって戻ってこないので、きっとどこかで井戸端会議を始めてしまったに違いない。 
 

「お前が言い出したことなんだからひとりでやればいいだろ」

「だって私、料理作ってもすぐに失敗しちゃうじゃん」

じゃあ、なんでプレゼントのリストに食べるものをいれたんだよと呆れても、突っ込んだりはしない。

仁菜が提案することは、つねに俺も頭数に入れられている。それも昔から変わらないことだ。


「料理くらい覚えないと、いつまで経っても男に間違われるぞ」

「今はスカート履いてるから間違われませーん」 

仁菜はわざとスカートをひるがえすように、くるりと一周回ってみせた。