ごめん。ぜんぶ、恋だった。



次の日。俺は寝ぼけまなこでスマホのアラームを解除する。そのまま一階の洗面所に向かい、顔を洗おうとレバーを下げたところで、後ろから思いきり背中を叩かれた。


「おはよう、お兄ちゃん!」

仁菜はすでに制服に着替えていた。


「お前、なんでそんなに元気なの?」

「えー朝は元気じゃなきゃダメじゃん」

寝つきは悪いのに、寝起きがいいのは昔から変わらない。

俺は低血圧だから頭が目覚めるまでに時間がかかるけれど、仁菜はいつもこの調子だ。

リビングに向かうと、すでに目玉焼きやウインナが焼かれた状態でダイニングテーブルに置かれていた。


「ふたりとも早く食べちゃってね」 

隣近所に回覧板を持っていかなければいけないらしく、母さんはいつもより忙しそうだった。


「仁菜子、(しゅう)。おはよう」

四人掛けのダイニングテーブルでは各自で座る場所が決まっていて、親父はいつもの席で新聞を片手にコーヒーを飲んでいた。 


「お父さん、おはよう。ねえねえ、お父さんって食べるものと、使うものと、残るものだったらなにがいい?」

「ん?急にどうしたんだ?」

「いいから、ひとつ答えて」 

仁菜が親父にこんな質問をする理由はただひとつ。来月にある親父の誕生日になにかをプレゼントする気なんだろう。

面倒くさいこと考えてるなと思いながら、俺は朝食を黙々と食べていた。