「うん。そうだよ。なんで知ってるの?」
「速水ってやつからプリント預かった」
「えーそうなの?べつに明日でもいいのに、本当に速水くんって優しいんだよね」
たしかに優しそうな雰囲気はしていた。
仁菜が好む男のタイプなんて知らないけど、大半の女子はああいう爽やかな人が好きだろうと思う。
「どうせ図書委員、押し付けられたんだろ」
決めつけた言い方をすると、仁菜がムッと頬を膨らませた。
「違うよー。ちゃんと自分からやりたいって言ったの!」
「なんで?」
「だって中学の時は女子のいざこざで部活も中途半端になってたし、高校では委員会くらいやりたいなって最初から決めてたんだよ」
「……へえ」
そんなの知らなかった。
仁菜は不器用で、流行りのものとか女子が盛り上がる話には疎いから、きっとまた人間関係に躓くだろうと。
そうなったら気づかれないようにフォローできたらと思っていたけれど、そんなの必要ないほど仁菜は自分で考えていた。
「私ね、カウンター班になったんだ。毎週水曜日に受付で本の貸出とか返却の手続きするの。あ、延滞者には催促に行ったりもしないといけないんだって。うまくできるかな」
そう言いながらも、仁菜は不安よりも楽しそうだった。
「お兄ちゃんも図書室で勉強したりしてるんでしょ?私が仕事してても邪魔しないでよね」
「それはどうかな」
「もうー」
仁菜がじゃれ合いながら笑っている。



