はじめて車内で見かけた時、小さなカレは満員電車で押し潰されて苦しそうに顔を歪めていた。

扉が開いて人が動いた瞬間、カレを私の元に引き寄せて、潰されないように私がカレの壁となった。

それから毎朝、私たちは一緒に通学している。

だけど、部活の朝練で毎朝他の生徒よりも早く学校に行っている私が、この電車に乗らない時ももちろんある。

「昨日は大丈夫だった?」

そう訪ねた私に、カレはにっこり笑って

「うん、あの背の高いお兄さんが助けてくれたんだ」

そっと指差す小さなカレの指先には、ブレザーに紺のチェックのネクタイ、スポーツバックを肩から下げた長身のあの高校生が乗っていた。

あぁ…イケメンだなって毎朝何となく会うのを楽しみにしていた人だ。

その後も、私が乗らない日は、いつも長身のイケメンくんがカレを守ってくれていて……。

そんな優しいイケメンくんに、私の心が奪われるのにはそれほど時間はかからなかった。

カレが乗って来るまでの二駅…。

イケメンくんを盗み見るのが私の毎朝の日課になっていて…。

ほどなくしてイケメンくんの詳細を知ってしまった。

T高バスケ部服部祥平(はっとりしょうへい)

双子の妹美月(みつき)のクラスメート。

美月のクラス遠足の写真の中で、笑顔で写るイケメンくんを見つけ、私の心臓は飛び上がった。

「この人…格好良いでしょ?
モテるけど彼女はいないんだ。

今…ちょっと私の気になるヒト」

そう言って頬を染めた美月に私の心がズキンと痛んだ。