ブーっと、電車が発車する音が鳴り響く。
多分もう俺たち以外にホームに人間はいない。
乗り遅れ確定な上に、今日は姫莉ちゃんはバイトだった気がする……けど。


離したくない…。


俺の腕の中で、少し嬉しそうに俺を見上げる姫莉ちゃん。…かわいい。こんなかわいい顔されたら、余計に無理。離せない。


俺は姫莉ちゃんの腰に回す手に力を入れて、チュッとキスをする。
何度も。何度も。触れるだけのキスをして、姫莉ちゃんは、足元がおぼつかないようす。
ちっちゃいからって頑張って背伸びしてる感じもまたかわいい。


「ゆみくん」
「ん?」
「…今回は、許してあげる」


ツン、とした感じでそうは言ってるものの、ちょっとテレてる。顔が赤い。
……ゴミクズ人間の俺が言ってていいことではないけれども。


「ありがと、姫莉ちゃん」
「…今回だけだからね。次したら、女の子が寄り付かなくなるくらい、顔面潰す」


単純に怖い。


けど、ニコニコ嬉しそうな姫莉ちゃんを見てたら、大丈夫かなって、思ってしまう。



「ゆみくん」
「ん?」
「バイト先に、なんて言えばいい?」



ごめんね、姫莉ちゃん。