『あぁそう。悪いな』
「いーよ」


俺は電話を切ると、のんびり保育園に向かった。


甥っ子の澄珈を迎えに行く案件。
今日は花ちゃんも兄貴もお忙しだからね。
仕方ないね。


でさ。


保育園ね、バイト先の近くなんだ。
この辺の保育園にかよってるんだよ、なんで3駅も離れてんだ?


…もしかしたら、姫莉ちゃんとすれ違ったりしないかなって。淡い期待。


保育園についてすぐ、俺のことを見つけたちっさい子たちは、見慣れない顔が不思議なのか、ガン見してくる。


「すいません、澄珈迎えに来たんですけど」


若い女の先生に笑顔でそうやって聞くと、明らかに嬉しそうな顔で、あぁ、チョロそ、なんて思っちゃう。


「澄珈くん、今は校庭でお友達と遊んでて。
いつも30分くらい遊んで帰るんですよね、大丈夫ですか?」
「あ…そうなんですね、ありがとうございます」


振り返って校庭を見ると、砂場で砂を撒き散らす澄珈と、そのお友達。
おっ、女の子じゃん。
やるじゃん澄珈。
やっぱ、兄貴の子どもだな。俺の甥っ子。
さすが。