姫莉ちゃんはぐすぐす鼻をすすりながら、小さい声で話を続ける。


「…無理だよ、俺何人と遊んできたと思ってんの?
2ヶ月くらい前までは1週間前、誰と寝たかすらわかんないレベルだったんだよ?」


「ゆみくんとそーゆーことした後、またゆみくんに会いたくて、同じことしてたよ。そーゆーことした相手の名前全部覚えてる…重いかな?」


「本来ならそのほうがいいはずだよね」


「…重いんだよ、私。やめてよ、私のこと惑わせないで?
お金ないし、時間もないし、そーゆーことしてる暇もないの。
重いし、生活のためなら他の男に貢がせちゃうような女なんだよね、彼氏とか作ったら生活できないような女なんだよ。
少なくとも、ゆみくんのことは絶対、満足させられない。だからさ」


「別れて?ゆみくん」


いつもの優しい笑顔で。
ぷっくりとしたピンク色の唇は、きゅっと弧を描いていて。


いつもの優しい姫莉ちゃんだった。
それが全部だった。
この話の全部。


“拒絶”を表す最大の、優しい笑顔だった。