はーあ。文句、言えないもんな。
住まわしてもらってるの、俺なわけだしな〜。


「いや、だからさ。どーなわけ?それ。
お前その服どこで手に入れたよ?」
「買ってもらった」
「誰に?」
「…誰だろ。デート誘ってくれた子」


耳に入ってくる、聴き慣れた声。
…姫莉ちゃんの声、と、誰かの声。男。


精肉コーナーの方。
俺はそっちを覗き込んで、姫莉ちゃんと買い物カゴを持つ男を確認した。


…何あれ。
ふーん、男?
へー…なんでさ。


強引とは言え、付き合ってるのは俺じゃないの?
なんで、他の男と遊んでんの?


「そーゆーの、良くないだろ。
そこまでして節約しなくたっていいって」
「女の子の衣服代はかさむんだよ?
全部買ってたら破産しちゃうよ」
「弄ばれてる男の気持ちになれって」


“弄ばれてる男”…?
あれ、姫莉ちゃんってそんなタイプだっけ?
え…もっと、天然でふわふわで、純粋で…ちょっと脅したらムッとしちゃうようなそんな子じゃ、ないの?