「お前も、そろそろ自分の身を固める場所、見つけたんじゃねーの?そーじゃなきゃ、今までそんな1人の女の子に執着したことなかったろ?」


俺も昔はそーだったもんな、なんて懐かしそうに笑う。
…そんなの、わかんない。
俺が姫莉ちゃんに落ち着くと思えない。


だってさ、姫莉ちゃんに近付いたのは、
いつもの子より地味で、
いつもの子より純粋で、
いつもの子より可愛かったからで。


それが恋に発展するなんて、思ってもないし、それ以前に俺。
……好きがなんなのか、わかんない。


「花がさ。弓弦の彼女、いつになったら見れるんだろ〜って、毎日ウキウキしてるから。
本気になったんなら、いつでも連れて帰って来いよ?」


学校と実家は特別離れてて片道2時間くらいかかってしまう。
だから、高校に通う3年間だけ、条件付きで妻子持ちの兄貴の家に居候することになった。
その条件が、『本当に好きになった女以外は連れ込まない』ってこと。


俺が女遊び激しいのは中学の頃からで。
それは兄貴の姿を見てた俺がバカみたいに真似した結果。兄貴もそれには反省してるみたいで、ことあるごとにこうやって俺の面倒を見てくれて…。


でも、好きとか、こーゆーのはいまだに全然わかんない。
無理だな俺、兄貴みたいに、幸せな結婚とか、出来ないかも。


ぐっと、枕に顔を埋めた。