私は今日口紅を買いに行く。
自分のための初めてのプレゼントだ。



女子高生になってもメイクなんて一切していなかった。
背だけがひょろりと高くて、短い髪はまるで男子のようだと周りには言われてきた。
「かっこいいだろー」
笑って応えていたけれど、本当はどこか悲しかった。
私だって本当は女っぽくなりたかった。





「どんな色にいたしますか?」
「私にも似合う女性らしい色がいいです」

デパート一階の化粧品売り場。しっかりメイクをした販売員が何色かの口紅を取り出す。

「色がお白いので青みのあるピンクやベージュの入った赤なども似合うと思いますよ。つけてみましょうね」

まずピンクをつけられて、浮いてはいないものの、自分のイメージとは違うと感じた。オレンジ系も健康的でいいが、しっくりはこない。

 最後につけられた肌馴染みのいい赤。

 これならいいかもしれないと思った。
 私がなりたいと思っていた可愛い女の子には程遠い。でも、この赤の口紅をひくと大人っぽいかっこいい女性に私でもなれた。女性販売員も、

「このお色、とってもお似合いですね」

 と言った。私はその口紅をラッピングしてもらい、家に帰った。