猫娘とおソバ屋さんで働いています

「騒ぎにって、私、、やっぱりここにいたらまずいのかな?」
「まずくないですよ」
「うん、青山さんを追い出すつもりはないよ。みさきくんの実家にも僕から伝えるから心配しないでね」
「でも本当に大丈夫なんですか。その、私、」
「まあ、騒いでいるっていっても一部……というか一人だけだから」
「はい?」
「俺の姉がちょっと」
 言いにくそうに。
「何か誤解しているみたいでして、あおいさんに会いたがってるんですよ」
「はぁ?」
 何でまた?
 というか、みさきくんのお姉さんってことは九尾の……。
「九尾って狐のことだよね」
「ええ、そうですけど」
 私はみさきくんの頭の上から足先まで眺める。未だに彼が妖怪だなんて信じられない。妖怪っぽさというかそんな雰囲気さえ外見からは感じられなかった。
 でも、妖怪なんだよね。
 それも九尾の狐。
 これは私にもイメージできた。
 昔、忍者もののアニメで「九尾の狐」が出ていたのだ。当時流行っていたアニメだからよく憶えている。
 となるとみさきくんのこの姿は仮の、ということか。
「……」
 私は頭の中でキツネミミを生やしたみさきくんを描いた。ついでにふさふさもふもふの尻尾も付け足してみる。
「……」
「あ、あおいさん?」
 たまらず、にやつきかけた顔を両手で隠す。
 みさきくんの戸惑った声がするがちょっと待っていてもらうしかない。
 というか可愛すぎる。
 尻尾にすりすりしたい。
 もふもふ最高!
 大家さんの声が現実に引き戻す。
「青森さんって、もしかして」
「はっ、いえいえっ!」
 半笑いで応じてしまったけどやむなし。
 そんなにすぐには真顔に戻せないよ。
「み、みさきくんってその姿は人に化けているとかなの?」
「え? そうですけど」
「元の姿ってどんななの?」
「どんなって、そりゃ、九尾の狐ですよ」
 むう。
 流れで変化を解いてくれるかと期待したのに、みさきくんってば説明だけで済ませようとしてる。
 つまんない。
「青森さんに本来の自分を見せてあげたら?」
 大家さんが促してくれる。
 グッジョブ!
 だが、みさきくんは首肯しない。
「必要ないと思いますよ。すでに正体は明かしているわけですし」
「青山さんは興味あるみたいだけど」
「そうなんですか?」
 向けられた質問に私はドキッとする。
 手を振って否定した。
「そそそそんなことないよ。べべべ別にみさきくんの尻尾にすりすりしたいとかそんなことこれっぽちも考えてないからね」
 あ、余計なことまで言っちゃった。
「……」
 うっ。
 みさきくんの沈黙と視線が痛い。
 私は作り笑いで受け止めきれるかどうかわからない視線を受けようと頑張る。
 怪訝さ全開のみさきくんのビームは私の予想をはるかに超えて痛い。さすが九尾の狐といったところか。
「あ、えーと」
 堪えきれずに私は話しかける。
「ほら、もふもふふわふわって何だかいいと思わない? 枕だって硬いより柔らかいほうがいいじゃない。そそそれにきっと可愛いのは損にならないよ。私も可愛いのは好きだし」
「そう言われても、俺、オスなんで」
 少し不機嫌そうに口を尖らせている。
「あんまり可愛いとか、反応に困るんですよね」
 それもそうかも。