猫娘とおソバ屋さんで働いています

 直子さんが言った。
「正解は」
 ドゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル……。
 口真似っぽいドラムロールが頭に直接流れているのは五郎さんのせいだろう。
 じゃーん。
 シンバルの「音」が響く。
 にこやかに。
「僕、狼男……じゃなくて狼女でした!」
「……」
「あ、あれ?」
 私がノーリアクションでいると、直子さんが戸惑う。
「直子」
 とタマちゃん。
 ニシシ、と白い歯を見せて笑う。
「お前おネエと思われてるにゃ」
「ええーっ!」
 直子さんの口が大きく開かれた。
「ちょっと、それ酷くない? 僕、、女だよ?」
「その『僕、』も誤解される原因にゃ」
「だってこれは仕方ないよ。そういうふうに育っちゃったんだから」
 直子くんのところは男兄弟ばっかりだから。
「そうなんですか?」
 五郎さんの「声」を聞いて、私は直子さんにたずねた。
 直子さんが首肯する。
「そうだよ」
「こいつのうちは子だくさんにゃ」
「というかひいじいちゃんの台からお兄ちゃんの子供の台まで同居してるから、大家族になっちゃってるんだよ」
「あれはもう『群れ』にゃ」
「そうだね」
 普通の家だと住みきれないからマンション一棟借り切ってるんだ。
 と、五郎さんの補足。
「夏彦さんのところの物件なのよね」
 彩さんも付け足す。
 私のアパートの大家さんって、いろいろな物件を持ってるんだ……。
 少し感心しながら私は直子さんからタマちゃんへと視線を移した。
「それでタマちゃんは」
「お前、あたしを見てわかんにゃいのか?」
「……」
 見たまんま……?
「あ、タマちゃんは猫娘よ」
「はぁ、そうなんですね、やっぱり」
 私はあまりにも想像通りだったので拍子抜けしてしまった。
 この反応にタマちゃんがむっとする。
「何だか不満そうだにゃ」
「あ、いえ、そんなわけでは……」
 睨みつけてくるタマちゃんの目が怖い。
 これからうまくやっていけるかな?
「人間はあおいちゃんだけだけど、がんばってね」
 彩さんが微笑んでいる。
 うん、まあ気負わずに。
 と、五郎さんの「声」が励ます。
「これからいっぱい食べ……楽しもうね」
 直子さん、ひょっとしてもうお腹が空いてきているのかな?
「……ま、せいぜいしっかり働くがいいにゃ」
 タマちゃんの目つきが鋭さを増す。
 ううっ、怖い。
 見た目はとっても可愛いのに。
「よ、よろしくお願いします」
 明日からのパート生活に不安を抱きながら、私は再度みんなに頭を下げた。