タイムスリップなんてあり得ない。 この状況から察するに、きっとあたしは海でなにかあってここに運ばれたんだ。 それで、長い夢を見ていたって考える方が、自然だよね。 ということは、阿久津さんも、山根さんも、向井さんもいないんだ。 もちろん、昇さんも… 見送ったみんなが実在しなかったのなら、辛い死に方をした人がいないということ。 ホッとして涙がこぼれた。 だけど同時に、安堵の涙はすぐに例えようのない喪失感の涙へと変わった。