「俺は、俺は…っ、この手で…っ、俺が守りたい幸せと同じ幸せを、いくつも!いくつも奪ってきたんだ……っ!」 泣いていた。 涙も流さないで、泣いていた。 「……ああ、寒いなぁ、だけど、あったけえ」 寒いと言い出した山根さんを、あたしはまた熱が出る予兆かと思ってたのに、あれから山根さんはどんどん冷えていった。 まるで向井さんの最期みたい。 氷みたいだ。