「あんまりじれったいとさ…」
ぽーん…
私の指からではないピアノの音と、林くんとの至近距離。
「奪っちゃうよ?」
「んなっ?!」
「なんつって。ま、朱里亜はかわいーし?俺なら離さないけどなぁ?」
「ばっ、ばか!」
「じゃあさ、いい加減俺の名前もちゃんと呼んでよ」
にしし、と嬉しそうに笑う彼に私からの手痛い一言。
「下の名前なんだっけ?」
「うーわーぁ…これは泣くわ。酷過ぎ。ほんと、汰一しか見てないのねぇ。俺の名前は秋成(あきなり)あっきーって呼んで」
「えー…やだー」
「なんでだよ!このこの!」
「ちょっ、止めてよー!髪の毛乱れるっ」
そんな会話をしてギャーギャー騒いでいると、そこに突然ガラガラと誰かが入り込んで来た。
「「あ、汰一」」
二人揃っての振り向き加減に、何故だか汰一はイライラした様子で…。
「あ、じゃねーし」
とだけ言うと、私のすぐ横にドカっと腰を下ろした。



