私は雅人さんと川相邸を訪ねることになった。


母も招かれたが「私は遠慮する」と
最後まで拒んだ。


うん 私でも行かないかな
20年も前のことが
色々頭によぎるだろうから
それに当時修羅場のあった
相手の奥様に会いたくはないよね。


ノースエリアの10階が川相邸
雅人さんの実家は15階
どちらとも豪邸には違いない。


玄関で迎えてくれたのは父川相さんだった。


父と判明して
まだ「お父さん」と呼んだことがない
以前は川相さん川相さんって呼んでいたのに
それもなんかおかしくて
どっちも呼ぶことができない。


25畳もあろうかと言うリビングには
おじいさんを始め2人の息子が居た。


お母様は台所で何やら準備をしている。


「あっ!!!この人この前の」


長男の陽二さんは私の事を覚えていた。


「みんなにはこの前話をしたけど
この愛華さんはお父さんの実の子なんだ
君らにとってはお姉さんになるんだよ」


「援助交際かと思ったらいとこだと紹介されて
そして今は実の子?
理解しようと思っても複雑だよな」


確かにそうだよね。


「複雑だと言ってもオレらは別にいいけど
母さんが可哀想だよ
母さんの気持ちになってみ?
父さんの過去を知って
隠し子がいたとわかったときの
気持ちになってみろ
だからああして用事してる風にして
ここへ来ないんじゃないの?」


弟の大志くんが台所を見て言う。


やっぱり来なかった方が良かったんじゃない?


「お母さんはちゃんと理解してくれてるよ
だから愛華のお母さんもどうぞって
招待してくれたんだから」


「でも人の行為を無駄にしたって事だよね
ここに来てないってことは」


この大志くんは一言一言がキツい
母は来なくて正解!
嫌な気持ちになると思う。


「そんな事を言うんじゃないよ」
川相さんが大志くんを止める。


来なければよかった。


私の気持ちが通じたのか横に座る雅人さんが
そっと私の手を握りしめた。