幸いに奥さんは私に気がつかなかったけど
お父さんは気がついて
その日のうちに連絡をしてきた。


「さっきの子は誰の子?」


「心配しなくてもあなたの子供じゃないわ」
と突っぱねる母に
「その子の父親は誰?」としつこい父
「あなたと別れて
すぐに付き合った男との子供よ」
「君はそんなことをする女じゃないことぐらい
わかってる オレの子じゃないのか?」
あまりのしつこさに


「例えあなたの子供だったとしても
あなたには迷惑かけない!」
と電話を切ったがその日を境に
何度もかけてくるようになった。


「それから年に1回だけ愛華の誕生日に
3人で会うようになったのよ
慰謝料を拒否した私に
プレゼントを渡させてほしいという
その願いを受け入れたのよ」


言われてみれば記憶がある
おじさんがおもちゃ売り場で
「好きなもの買いなさい」って言ってくれたのを
夢だとばかり思っていた
あれは現実だったんだ。


覚えているのはシルバニアの
大きな家を買ってもらったっけ
付属品も全て揃えてくれて
「何個でも買いなさい
ここにあるもの全部買ってもいいよ」
って言われたっけ。


それは今の義父と結婚するまで続いたという。


「それからは?」


「向こうも奥さんいるし子供もいるし
私も拓実も出来たし
それっきりよ ただ・・・」


「ただ?」


「お父さんがあなたの実の親のことを知って
娘を大学に行かせるから
それだけの工面はしてもいいんじゃないか?
と詰め寄って最後は脅しよね!
大学4年分の学費とかを請求したのよ
でも、向こうも偉いから
これでもう何も言ってこないようにと
承諾書を書かせてそれっきり」


「それってひどくない?
あたし大学に行ってないけど?
詐欺じゃん!」


「そんなお父さんだったのよ
辛い時に出会って母さんとしては
あの人が頼りだったの
でもあんな人だとは思わなくてね
その脅しをした頃から
拓実が自立したら離婚しようと
考えてたのよ」