俺には人を消すなんてことはできない。



父上は…なんでも消せる。



「どうして怒っているのだ?私は息子を消されかけたというのに」

「軟弱な人間風情がっ‼︎」

「さて、話をしようか、バルジャ皇帝よ。応じないのであれば、この部屋からまたバルジャ人が消えることになる。次は…そうだな、そこの番犬にしようか」

「お前っ…」



震え上がる、バルジャの兵士たち。



座らない皇帝のせいで、またひとり姿を消した。



「やめろっ‼︎」

「そうか、話す気になったのだな。嘘偽りなく、真実を話さなければ…この場から全員が消えることになる」



冷静だと思っていた父上が、実はいちばん怒っていたのだと思い知った。



自分の国を傷つけられたのなら、怒って当たり前だったのに。



気づかせないくらい、穏やかに振る舞っていたのだ。



真実はやはり、バルジャが犯人だった。



自然災害で、多くの犠牲を出し、バルジャの情勢はあまりにも不安定だと。