恐ろしいほど美しい。



ゾクっと背筋が震える。



「答えろ」

「あのっ…殿下の目が…」

「目…?」

「ずっと笑っていなかったから…。怖くて…その…」

「そうか。完璧に騙していたつもりだったのだがな」

「騙す…」

「妃たちには優しくして機嫌を取っておけと言われていたから、優しくしていただけだ。それなのにお前は怯えていた。怪し過ぎると思ったが、俺が怖かっただけなのか」

「こ、怖い、です…」



今がいちばん、怖い。



これがこの人、私の旦那様なの…?



「女なんか誰だって同じだ。どうせ、お前だって正妃になりたいだけで俺の機嫌を取るのだろう?」

「そう、かもしれません…」

「少しくらい、笑ってみたらどうだ」



笑えるわけがない。



こんなに怖くて、どうやって笑えと言うの?



「あなたは…ひどい人…」

「貴族の女は特に嫌いだ。そんなキレイな顔してても、ここは真っ黒なんだろ?」



お腹に伸びた手に、ビクッと身体が震えた。