皇子に嫁いだけど、皇子は女嫌いでした

黙ってしまった私に、殿下は笑う。



「見つけたらいい」

「見つかるのでしょうか…」

「きっと」



そう言ってグラスのお酒をコクっと飲んだ。



不思議…。



この人が帝国を治める次の人ってことが。



そんな人と話をしていることが。



「殿下の趣味はなんですか?」

「私は馬に乗ることが好きだね。以前は格闘技にハマったこともあった」

「馬…格闘技…」

「馬には乗れる?」

「乗ったことはないです。父が怪我をするようなものはダメだと…」

「大事に育てられたんだね。申し訳ないな、奪ってしまって」



そうじゃない。



父は喜んでいたもの。



私なんか、いいところに嫁ぐために生まれて来たようなものなの。



「アリス」

「はい…?」

「子どもを作ってしまおうか」

「えっ…?」

「そうすれば、君は間違いなく正妃だ」

「私が…正妃…」

「そのためにいるのだろう?」

「そう、ですね…」

「では、問題ない」



今まででいちばん、恐怖を感じた。