【フィンリューク】



アリスに名前を呼ばれた時、ものすごい支配欲に駆られた気がした。



アリスの全てを奪って、自由なんか与えずに俺だけをその大きな瞳に写せばいいと。



好きになったら、その気持ちを返してくれるかと問われた時、この気持ちが『好き』なのかと、スッと心に落ちた。



どうやら、俺はアリスが好きらしい。



泣かれて、俺の気持ちを少し伝えたら、アリスは背を向ける俺の背中に控えめに抱きついてきて。



不思議と心地よく、そのまま眠りに落ちた。



その日から数日、以前となにも変わらない態度の俺とアリスは、今日お忍び星祭りに出かける。



さすがに寒すぎて馬では行けず、最悪なことに馬車移動。



「リュークばっかり‼︎」

「はいはい、いい加減諦めてくださいよ、母上」

「アリスちゃんとデートだから魔法かけてあげるんだから‼︎私も行きたかった…」



乗り物に激弱な俺に、先に癒しの魔法をかけてくれる母上は、まだ外に行きたいと駄々をこねているが。



父上が許さないはずなので放置。



「そんなに距離もないから、これで行きは大丈夫だと思うわ。帰りはリリーのお薬で我慢してね」

「感謝します、母上」

「気をつけて行ってらっしゃい‼︎アレクに会ったらたまには帰るように伝えてね?」

「はい」



馬車で出発。