逃げようとすれば捕まえられて、逆に殿下を喜ばせる。



大人しくしていれば、息もつけないほどのキスで逃げないと死にそうになる。



あぁ、この人は私の嫌がることを、嫌がるポイントを完全にわかってやっているわ…。



「お待たせしましっ…ごごごっ、ごめんなさいっ‼︎あっ、申し訳ありませんっ‼︎失礼しますっ‼︎」

「よい、もう要は済んだ。ヒナが作ったのだと聞いたが、それは母上直伝のものか?」

「は、はい…。あまりにも細いので、がっつり系を…」

「アリスの力になってくれ、ヒナ。では私はこれで」



真っ赤な顔のヒナが頭を下げて、部屋を出て行った殿下に向かってクッションを投げつけた。



閉められたドアによって殿下に命中しなかったけれどね。



「変なもの見せてごめんなさい、ヒナ…」

「いえっ‼︎仲良きことはいいことですっ‼︎」

「なんだかいい匂い…」

「これ、カツ丼です‼︎お召し上がりください‼︎」



ヒナの心遣いは、とても温かい味がした。



私のオアシスはヒナ、あなたよ…。