皇子に嫁いだけど、皇子は女嫌いでした

【アリス】



厳格な父と淑女のお手本のような母。



とても厳しく躾けられて、あまり自由もなく育った。



『いい相手に嫁ぐため』に育ったのかと思う。



兄は優秀な騎士で、父は侯爵。



「お嬢様は本当にお美しい。何を着ても絵になりますね」



ドレスを着て、思い切りめかし込まれる。



頼んでもいない髪型に、私に似合う化粧。



人は見極めるようにと、幼少の頃から言わらてきたら、誰を信用すればいいのかわからなくなった。



「変な噂にならないようにな」

「はい、行ってまいります、お父様」



私は人形だ。



父の名前を汚さないよう、兄に迷惑をかけないよう。



美しく完璧な母の顔を潰さないよう。



ひたすら笑顔を貼り付ける。



「やぁ、アリス。今日も一段と美しいな。僕と一曲踊ってくれないか?」

「これはトーマス様、お久しぶりでございます。またご冗談を。パートナーがいない私に気を使ってそんなこと言ってくださるなんて、お優しい方ですわ。お連れ様も鼻が高いことですね」

「いや、本気で…」

「羨ましいです、お連れ様が。私も誰かに誘っていただけるように努力しないといけませんね。では、失礼します」



こうやって誘いを断ればいい。