静まり返った部屋で、しばらくぼんやりと蓮司のが出て行ってしまったリビングの扉を眺めていた。

「ダメだな…私…」

涙を手の甲で乱暴に拭い、作りかけのカレーを完成させる。

少し不格好なジャガイモを見て…気がつけばまたポタポタ涙が溢れていた。

慣れない包丁を握って、私の為にご飯を作ってくれていて、私と向き合おうとしてくれていたのに私が拒絶してしまった。

蓮司はいつだって優しくて、いつもまっすぐにわかりやすく私に愛情を向けてくれていて、だけど私は自分の感情の向けかたが、伝えかたがよくわからない。

男の人と付き合うのも蓮司が初めてで…彼にドキドキしているうちに瞬く間に入籍をして一緒に住みはじめて。

幸せで楽しくて好きがどんどん加速していた時に、私の中に突然芽生えた負の感情の対処にとまどって…。

だけど結婚って、一緒に住み家族になっていくって…当たり前のことだけど難しい。