透明な海



二人で鞄を抱え、三十分ほど雑踏を聴いて電車を降りた。

駅を出た先の空は綺麗な夕焼けだった。

「いい夕刻だね」十織は言った。

「そういや十織、お前まだカメラやってんのか?」

「ああ、休日にはたまに撮りに出掛けるよ」

「へええ。なんか意味わかんねえ雑草とかめっちゃ撮ってたよな」

「あれも、名前くらいはわかってたよ」

「えっ? あのやったらめったら撮ってた雑草だぞ? 一つ一つちゃんとわかって撮ってたのか?」

「まあ、だいたいは」

「はああ……。なんかおれ、たまに十織の知識の幅にびびるときあるわ」

「図鑑なんかを眺めてると、自然に覚えていくんだよ」

「いやあ、おれには覚えられる自信ねえわ」

「新しいゲームの世界観とか、操作方法とか、覚えるのにそれほど苦労しないでしょう? それに似てると思うよ」

「はあ、そういうもんなのかなあ……」

たぶんねと十織が返すと、アキは「まあ帰んぞ」と歩みを再開した。

「早くパズルが復活してくんねえとおれ悲しいんだわ」

「ほう……じゃあ今日中にできてたところまで戻そう」

「えっ、まじで?」

アキは嬉しそうに言った。

「絶対とは言わないけどね。何ピース? 絵柄は?」

「海外の夕焼けのやつで、マイクロ千ピース」

おっと、と十織は苦笑した。

「おれ、ずいぶん大きいこと言っちゃったみたいだね」

「いやいや、十織ならいけるって」

「そうかなあ」と苦笑すると、アキは「まじまじ」、「いけるって」と励ますように言った。