「楽斗。楽斗」

「ん?どうしたの?愛咲ちゃん」

二人は、どこをどう見ても見目麗しい美男美女。
一つ一つの仕草や所作にも、その美しさはあふれ返っている。

そんな、彼女…水谷愛咲(みずたにもえ)は、とにかく決断力が早い。

いわゆる行動派。

その彼女の声を掛けれた彼…小泉楽斗(こいずみがくと)は、とにかく思慮深い。


いわゆる慎重派。


そんな二人の関係が変わるのはもう少し……あと。





朝のHRを終え、ほんの少しの間に呼び出しを食らった私は、イライラしながら、楽斗の隣の席にどかっと座り込む。
そして、押さえ込んだ声で、楽斗の耳にいつものように疑問を投げ付けた。


「ねーぇ!この学校って、一体何人男子がいるの?!」

「……多分、女子より多いんじゃなかったかな?」

「…これ以上の拒否は無理だ…疲れる……」

楽斗の返答に、がっくりとうなだれる私。

「………毎日頑張ってるもんね、愛咲ちゃんは」


分厚い歴史小説を読みつつ、楽斗はそんなことを言う。
私はもっとイライラしてしまう。


だって…。