昨日迷子になった時に道を訪ねた人だ。



ピシッと着こなした騎士の制服と、腰にある長い剣。



胸の小さいエンブレムは、この国のユリの紋章。



第一王子の騎士様だったの⁉︎



私、切られなくてよかったなぁ…。



完全に不審者だったもの。



その方について行くと、本当にすぐに名前を呼ばれて国王様の前へ。



父とは違い、『王様』って貫禄がある。



すごい、威圧感…。



丁寧に礼を取り、顔を上げると、王妃様の横に立つ王子と目が合った。



えっ、えっ、えっ⁉︎



き、昨日倒れていた人じゃない⁉︎



ままままま、まさか…かの有名な…残酷無慈悲の第一王子…。




「昨日は助かった」

「あっ、の…王太子殿下とは知らずに…とんだ無礼を…」

「そんなことはいい。昨日のをもう一度頼めるだろうか」

「へっ?」

「握手するフリをして、頼む」

「は、はい…」


もしかして、まだ体調が良くないのだろうか。