俺に気がつき、苦笑いのサネルと、頭を下げたターシャ。



「キャサリン様はいらっしゃらないの…ですね…」

「キャシーには少し用事を頼んでいて、手が離せないのだ。先日ターシャ様と話をしたと、喜んでいたよ」

「私こそ‼︎お礼をもう一度言いたかったのに…。来月のハネムーンで、おもてなしさせていただきますので」

「伝えておくよ。道中、気をつけてくれ」




さっきとは別人の様なターシャは、先に馬車に乗り込んだ。



落ち込んでいるサネルに、なんて言葉をかけたらいいか…。



「なぜ、妃があんなに怒っていたのだ…」

「馬車にベッドがついてれば子作りに励めたねって、冗談を。…………もう、何ヶ月も触ってない…。本気で嫌われてるのかな…」

「何も言えん…。では、来月はよろしく頼む。国王にも、よろしく伝えてくれ」

「帰りたくないヨォ‼︎」



うるさいサネルを馬車に放り込み、また執務。



好きでも、嫌われることもあるのだな…。



不憫だ、サネル…。



そうならないように、キャシーをからかい過ぎるのを控えようかと、一瞬だけ考えた。