逃げたアレンには、あとで寝ずに書類の整理でもさせようと心に決め、自分の腹に空いた穴を見つめた。



穴だらけ…。



王族に似つかわしくない刺青。



生きるために必要なことだが、こんな俺を誰が受け入れると?



「なにが花嫁だ…」



耳のピアスを一時的に外したとして、パーティーが終わればいつも通りだ。



俺が婚約者を見つけ、結婚したいと言えば相手は断ることができない。



それほどの権力を持っている。



愛なんて望めない。



相手の国が喜ぶだけ。



俺のとこに嫁に来た女は、人質…いや、生贄のようなものだろう。



子どもを作れなんて簡単に言うけど、俺はこの体を見られるのはごめんだ。



相手に引かれ、イヤイヤ俺に抱かれる。



同情しかない。



ならば、せめて…。



俺の権力を欲しがってくれる女にする。



俺の力を愛してくれる女でいい。



花嫁には、それくらいしか望まなくていいのだ。