【キャサリン】



殿下の部屋へ泊まった翌日、ジョアンは目を潤ませて『お体は大丈夫ですか?』と聞いてきた。



大丈夫もなにも、私とアンドリュー様はそんなことはしていません。



だけど、勘違いさせておいた方がいいかと思い、リーナと口裏を合わせた。



「大丈夫よ。殿下はとても優しい方ですから」

「寝て過ごされてもいいのですよ?」

「ううん、大丈夫」



ジョアン、私は幸せだから。



あなたにも幸せになってほしいの。



その日から1週間後の午後だった。



「マルコ…」

「ジョアン‼︎」

「どうして、ここへ…」

「王家で船乗りを募集していると、情報をもらったんだ。応募したら、実績が認められて王宮専属の航海士になれたんだ!」

「そんなことって…」

「家は借家だが、きっといつか自分の家を持つよ。だから…結婚してくれないだろうか」



ジョアンの想いびとのマルコが、王家で雇われることになった。



確かに、サネル王子との取り引きなんかでは船を使う。



うちの島は波が緩やかでも、あちらは結構大変だと聞いた。



この国には海がないので、航海術なんかは、どこかから人を連れてきた方が確実だろう。