その力だったのか。



あの苦しさが消えたのは、やはり単なる治癒魔法ではなかったのだな。



「納得した…」

「なにが、ですか?」

「俺にも言ってないことがある」



テーブルに置かれていたカップに手をかざす。



他人に見せることは、ほとんどないこの魔法。



カップが一瞬にして消える。



「消え…」

「そこに移した」

「えっ?」



ドアの前に移動させただけだ。



驚きの表情で、目をパチパチしていて。



「どんな、原理ですか?」

「カップだけ、空間を移動させた。闇の中に消すこともできる。街一つ消すなんて、簡単なことなんだ」

「それは…使ったことが…」

「ない。そんなことは、絶対にしたくない。だから、この力に悩まされてきた。俺の体は、この力に喰われかけている」

「そんな…」

「呪われた力なんだろうな、きっと。お前の力だけだ、俺のこの呪いに効いたのは」

「私は…殿下を癒すことができますか?」



頷くと、キャサリンは笑ってくれた。



『やっと、ここにいる意味がわかりました』



そう言って、俺の手を優しく握った。