私の退社にあたって、誰も興味がなかったようで、何も聞かれずにいたから、その辺は良かったと思う。 実家にも帰らない。 母親にだけは打ち明けたけれど、固く固く口止めをしたから、私の身の振り方を彼に知られる心配はない。 私は、彼が訪ねてくる前に早々に引っ越しを済ませ、小さな病院の事務の仕事に就いた。 心は、晴々としていた…わけではなく。 新しい部屋の中で体育座りをして、幾度も泣いた。 愛してた。 本気で。 だから、確かな物が欲しかった。 だけれど、それは叶わなかったんだ…。