決戦の日は十二月二十四日。

 つまりはあと二十三日後である。

 いや、すでに今日は十二月二日なのだから二十二日後というべきか。

 中野恋歌(なかの・れんか)二十四歳はいつものように会社の女子トイレの洗面台にて鏡に映る自分とにらめっこしながらそう思った。

 鏡の向こうの自分は控えめに見てもかなり可愛い。

 太めな眉もきつい印象のある目も形の良い鼻や小さめの口も、尖り気味な耳もそれぞれがあるべき場所にあるという感じで結果「可愛らしい顔」を作り上げている。

 さすがミス風見大学(になるはずだった)。

 返す返すも最終年度のミスコンに出られなかったことが悔やまれる。つまらない男と付き合っていたせいで出場を見送ってしまわなければ間違いなくグランプリを獲っていたはずなのに……。

 結果、最終順位は五位(エントリー三回目の時)。

 恋歌はセミロングにした黒髪に触れた。

 癖っ毛のせいで毛先ははねている。数万円を払えば毛髪矯正できるそうだが三ヶ月から半年しか持たないという時間制限つきの髪に一体何の意味があるのか。

 自分はそんなものを必要としない。

 このままでも十分戦えるのだ。

 彼女はぐっと拳を握った。

 絶対に、絶対に作戦を遂行してみせる。

 村田修(むらた・おさむ)とイブを過ごしてみせる。

「私、負けませんよ」

 独りごち、恋歌は眼前にいる自分に微笑んだ。