「……菜子って意外とちゃんとしてるよね。もっとちゃらんぽらんな性格だと思ってた」
「ちゃらんぽらんって……」
相変わらずな言い方に、靴を履き替えながら苦笑いをする。
でも、確かに。
ただただ彼氏がほしいと嘆いていた頃を思い出せば、茜ちゃんがそう思うのも致し方ない……かも。
そのまま当たり障りのない話をしながら、あたし達は教室へと向かった。
なんだかんだ言っても、ひとりだと憂鬱な気持ちばかりが膨らんだと思うから、茜ちゃんが居てくれて良かったと思う。
そして……。
教室に入ったところで、あたしの足はピタッと止まった。
それは、教室の中に彼の……望くんの姿を見つけてしまったから。
「大丈夫……?」
「あ、うん。ごめん」
心配そうな顔をして声をかけてくれた茜ちゃんに、笑顔を貼り付け返事をする。
前に誰かが、同じクラスの男子と付き合うのは嫌だって言っていた。
別れたときに気まずすぎるから……って。
その時は、同じクラスだとイベント事も一緒だし、いつでも一緒に居られて楽しそうなのにって、単純に思っていたけど。
今……あの時に聞いた言葉が、痛いくらいに理解できる。
こんなの、気まずすぎるし……苦しいよ。