恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―


私が軽く笑いながら「だから、はい。どうぞ」と差し出したのど飴を、ややした後で北川さんが受け取る。

その顔は神妙に見えて、やっぱりお節介だったかなと少し反省した。

迷惑には思われなくても、変に気を遣わせてしまったかもしれない。そもそものど飴ひとつでどうにかなる風邪なんてそうそうない。

まぁ……でも、もう後の祭りか。コンビニを見た瞬間、北川さんの咳を思い出して、あのまま放っておけないと思ったのだから仕方ない。

「迷惑だったら、誰かにあげちゃっても構いませんから。じゃあ、お疲れ様でした。……あ。お節介ついでに言いますけど、温かくして寝てくださいね」

割り切って笑顔で見上げると、北川さんはふっとわずかに表情を緩めた。
きっと、私がこども扱いしたようなことを言ったからだろう。

「ああ。お疲れ。気を付けて帰れよ、白石」

そう微笑んだ北川さんの雰囲気が、いつもより柔らかく感じた。


同窓会は、最寄り駅から徒歩五分程度のダイニングバーで開かれた。

商業ビルの八階フロアにあるそのお店はテニスコートが二面とれそうな広さがあった。駅の周りには式場がふたつあり、そこと提携しているという話だから、結婚式の二次会で使われることが多いのだろう。

オレンジ色の照明が照らす店内には、形もサイズ感もマンホールのような天板の背の高いテーブルが六台ほど置いてあり、壁際にはソファが並んでいた。

お店の奥にあるバーカウンターの中ではふたりのバーテンダーさんが雰囲気たっぷりにシェイカーを振っていた。

立食パーティー形式のため、お料理はバーカウンターとは少し離れた場所にまとめて置いてある。

店内にはゆったりとしたクラシックのBGMが流れているけれど、同窓会という騒がしくなりがちな場には少し合わない気がした。